人生どん底だった時、借金600万からの這い上がり方

33歳の時、俺は本当にどん底にいた

事業の失敗で退職金を使い果たし、妻に内緒で借金を重ねてた。気がついた時には600万を超えてた。給与は月35万。子どもが3人。妻は「もう何も言わない」という表情で、毎日、俺を見ていた。

その時の心理状態は「死ぬことを考えていた」と言っても過言ではない。本当に。

生命保険に入ってたので「これで家族に迷惑かけずに済むかな」という思いまで頭をよぎった。ただ、その考えで踏みとどまったのは「妻と子どもの顔を見た時」だった。死ぬことで、家族の人生を狂わせるわけにはいかない。そう思い直した。

その決心が、這い上がりの第一歩だった。

弁護士に相談した時、言われた言葉

借金600万は、さすがに自分では何ともならないと判断して、弁護士に相談に行った。その時に弁護士が言った言葉は「あなたの人生は終わりじゃない。ここからが本当の人生だ」だった。

その言葉は、当時の俺には「綺麗ごと」に聞こえた。600万の借金を前にして「ここからが本当の人生」って。ただ、その弁護士の冷静な分析が、その後の人生を変えた。

弁護士の判定：

• 給与月35万では任意整理は難しい
• 個人再生で借金を1/5に削減する
• 返済期間は5年
• ただし「給与が増えないと対応不可」

つまり「給与を増やすしかない」という現実を突きつけられた。

最初のステップ：給与を増やす決断

借金600万という現実の中で、最初にやったことは「給与を増やす」ことだった。

当時の会社では、昇給の見込みはなかった。だから、転職を考えた。ただ、転職には「1ヶ月の空白」がある。その間、生活費をどう賄うのか。妻から「借金を増やすな」という無言のプレッシャーを感じながら、転職活動をした。

3ヶ月かかった。その3ヶ月間は、毎日が面接だった。不採用通知も何度も来た。その度に「どん底にいるんだな」と思った。ただ、同時に「下は見えてるから、上に行くしかない」という心境にもなった。

4社目の転職面接で内定をもらった。給与は月42万。当時の月35万から、月7万のアップだ。転職期間の1ヶ月は、妻のパート代を増やしてもらうことで何とか乗り切った。

給与が増えても、返済は厳しかった

転職後、給与は月42万になった。弁護士に相談した時「月々幾ら返済できるか」という計算をした結果「月15万が限界」という判定だった。

個人再生で600万が120万に削減されたとしても、月15万の返済で5年間。その間、生活費は月30万、子どもの教育費は月4万。合計で月49万が必要。給与月42万では、足りない。

その足りない分は、妻のパート代で補う。妻のパート代が月10万あれば、月52万。月3万の貯蓄が可能になるという計算だった。

つまり、妻のパート継続が絶対条件だった。子どもが3人いる状態で、妻がパートを続けるというのは、想像以上に大変だったと思う。ただ、妻は「やるしかない」という態度で、パートを増やしてくれた。

その時に「この女、本当に強いな」と思った。同時に「自分は何をやってたんだ」という自己嫌悪も強まった。

2年目からの転機：副業を始めた

返済が始まって1年経った時点で「このペースでは何もできない。人生が返済だけになる」という危機感が生まれた。

そこで、副業を始めた。ライティングの仕事。当初は月2万程度。ただ、続けていると月5万、月8万と増えていった。

この副業収入が、心理的な支えになった。なぜなら「給与以外に稼ぐことができる」という実感が、「これからの人生も何とかなるかもしれない」という希望に変わったから。

副業は夜間と週末。子どもが寝た後、毎日3時間の作業をした。土日も副業。その生活を4年間続けた。

妻は「無理するな」と言ってくれたけど、当時の俺には「副業をしない選択肢」がなかった。個人再生での返済を終わらせ、その後の人生を築き直す。その目標しかなかった。

返済の中盤：気持ちの変化

返済が3年目に入った時点で、心理状態は大きく変わっていた。最初は「どん底」という感覚があったけど、3年間、毎月15万を返済していると「これが日常」になるんだ。

同時に、副業の収入も安定してきた。月々8万から10万。給与と合わせると月50万。その月50万から、返済月15万を引いても、月35万の生活費が確保できた。

つまり「何とかなってる」という現実が、毎月、明確に見えるようになった。

その頃から「借金600万」という数字が「何とか返せる数字」に変わった。人生も「どん底」ではなく「上昇途中」という認識に変わった。

返済を終えた時の感情

個人再生の返済期間は5年。最後の返済を終えた時、俺がしたことは「妻を抱きしめた」ことだった。

言葉はなかった。ただ、その抱擁で「一緒に乗り越えた」という感情を共有した気がした。

その日の夜、子どもたちに「パパの借金がなくなった」と説明した。子どもたちは「よかったね」と言ってくれた。その言葉が、俺の人生で最も嬉しい言葉だった。

返済後、人生が変わったこと

借金を完済してから2年経った。その間に、人生が本当に変わった。

給与は月55万に上がった。副業の収入も月12万。子どもたちも成長した。妻も「もう返済に追われなくていい」という表情になった。

ただ、最も大きな変化は「心の余裕」だと思う。

どん底にいた時は、毎日が絶望だった。朝起きるのが嫌だった。仕事に行くのも、家に帰るのも、全てが苦しかった。ただ、返済を終えると「人生は続くんだ」という当たり前のことが、実感できるようになった。

子どもの野球の試合を見に行く余裕も出た。妻と食事に行く余裕も出た。貯蓄も増えるようになった。

人生どん底にいる人へのメッセージ

もし、今、人生がどん底に見えてる人がいたら「ここからが本当の人生だ」という弁護士の言葉を伝えたい。

借金600万は、確かに大きな数字だった。ただ、5年で返すことができた。給与を増やし、副業を始め、月々の返済を続けることで。

その過程で、妻との信頼も、子どもとの関係も、全て変わった。悪い方には変わらなかった。むしろ、良い方に変わった。

どん底は「終わり」ではなく「始まり」なんだ。その認識を持つことが、這い上がりの第一歩。その第一歩を踏み出せば「後は続けるだけ」になる。

5年間は長かった。ただ、今は「あの5年間があったから、今の人生があるんだ」と思える。

人生どん底の真っ最中は、そんなポジティブなことを考える余裕はないと思う。ただ「続けば、必ず上に出る」。それだけは、俺の体験から言える。

文字数：約2,800字